損害保険(自動車保険)契約の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者による解約権の行使が否定された事例

金融法務事情を定期購読しているのですが,東京地裁平成28年9月12日判決(金融法務事情2064号(2017年4月25日号)88頁)が掲載されていました。

事案は,損害保険(自動車保険)契約の解約返戻金請求権を差し押さえた債権者が,取立権に基づき,同保険契約の解約権を行使できるかが問題になりました。

結論としては,債権者は,取立権に基づき,損害保険(自動車保険)契約の解約はできないとされました。

 

同様に解約権の行使が制限されるその他の例としては,①建物賃貸借契約の敷金返還請求権を差し押さえた債権者による賃貸借契約の解約権,②雇用契約上の退職金請求を差し押さえた債権者による雇用契約の解除権などが挙げられます。

他方で,生命保険契約では,債権回収のために,取立権に基づいて生命保険契約を解約できるので(最一小判平成11年9月9日・民集53-7-1173),これと対比する必要があります。

なお,上記裁判例は,控訴されているようなので,控訴審の判断を注目したいと思います。