民法では,人が死亡すると,その人の財産は相続人に承継されることとされています。承継される遺産は,預貯金や不動産などのプラスの資産だけでなく,銀行に対するローンなどの債務も含まれます。
被相続人(死亡した人)に財産があっても借金等の債務の方が多い場合や債務しかない場合は,家庭裁判所に相続放棄の申述をすることで遺産(資産と負債)の承継を拒否することの検討も必要です。
まずは相続人間で遺産分割の話し合いを行います(遺産分割協議)。話し合い(協議)がまとまらない場合は,原則として家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて,遺産分割調停での話し合いによる合意解決を目指します。遺産分割調停による解決も不成立となった場合には,審判に移行し,審判による解決を図ることになります。
遺産の分割方法には,現物分割,代償分割,換価分割,共有分割の方法があります。
遺言がなければ,法定相続人が遺産の分割方法を決めますが,特定の人(内縁の配偶者等)に財産を渡したい場合や特定の相続人に特定の財産(株式等)を相続させたい場合などには,遺言を作成しておくことが有用です。
遺言の種類には色々とありますが,一般的に自筆証書遺言又は公正証書遺言を利用される方が多いです。
遺留分制度は,兄弟姉妹以外の相続人について,その生活保障を図るなどの観点から,被相続人の意思(遺言等)にかかわらず,被相続人の財産から最低限の取り分を確保する制度です。遺留分は,その相続人の最低限の取り分を示す概念になります。
遺留分権利者は,遺留分を侵害された額に相当する金銭の支払を請求することができます(遺留分侵害額請求)。
遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が相続の開始及び遺留を侵害する贈与や遺贈を知った時から1年間行使しないときは時効にかかりますので、ご注意ください(前記贈与や遺贈を知らなかったとしても相続開始の時から10年でも時効にかかります)。
相続放棄とは,プラスの財産(遺産)とマイナスの財産(債務)の承継を拒否(放棄)することで,これにより初めから相続人にならなかったことになる制度です。
相続放棄は,自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に,被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して行います。ご依頼いただいた場合、面倒な戸籍の取得手続なども全て当事務所で行います。
なお,相続債務の存在を認識していなかった等の場合は上記3ヶ月の熟慮期間が経過していないこともありますので,そういった場合も諦めずに一度弁護士までご相談ください。
相続に関するその他のよくある問題として以下のものがあります。
①法律で定められた方式に違反した自筆証書遺言の有効性の問題や認知症などにより遺言能力(事物に対する一応の判断力とされています)がない者による遺言の有効性の問題
②相続人の一人が無断で被相続人の死亡前後に被相続人名義の預貯金を引き出した場合の使途不明金の問題
③相続開始後の遺産不動産から生じる賃料収益の処理に関する問題
④特別受益・寄与分の問題などです。
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1.相続の解決までの一般的な流れは次のとおりです。
①被相続人の死亡による相続の発生
②遺言書の有無の確認
③相続人の調査・確定
④相続財産の調査・確定
⑤相続の承認・放棄・限定承認の選択
⑥相続を承認する場合の各相続人との間で遺産分割協議
⑦遺産分割成立後の各種名義変更等の手続
2.各種期限にご注意ください。
相続に関する各種手続には次のとおり期限が設定されているものがありますので,ご注意ください。
遺産分割の当事者は相続人であり,その範囲は民法で定められています。相続人の範囲や順位は次のとおりです。
【相続人の範囲・順位】
相続には順位(第1順位~第3順位)が定められており,先順位の相続人がいない場合に次順位の相続人に相続権が発生します。
1.遺産分割を進める方法としては,次の4つがあります。
①遺言による指定どおりに遺産を分割する方法
②遺産分割協議により分割する方法
③家庭裁判所での遺産分割調停により分割する方法
④家庭裁判所での遺産分割審判により分割する方法
2.個別の遺産をどのように分割するかについては,次の4つの方法があります。
3.分割方法の優先順位
遺産分割協議や調停の場合は,当事者が合意すれば,どの分割方法も採ることができます。
審判の場合は,家庭裁判所の広い裁量に委ねられていますが,一般的にはまず現物分割を検討し,それが相当ではない場合には代償分割を検討し,代償分割もできない場合は換価分割を検討し,共有分割は最後の手段になることが多いです。
1.遺産分割調停を申し立てる場合に家庭裁判所に提出が必要な一般的な書類は,次のとおりです。
(裁判所ごとに若干異なることもありますので,詳細は申立をする家庭裁判所にお問合せください)
①被相続人の出生時から死亡時までの連続した戸籍謄本(除籍,改製原戸籍)
②被相続人の住民票の除票または戸籍附票
③相続人全員の現在の戸籍謄本
④相続人全員の現在の住民票または戸籍附票
⑤被相続人の子(代襲者含む)で死亡している者がいる場合,その子(代襲者含む)の出生時から
死亡時までの連続した戸籍謄本(除籍,改製原戸籍)
⑥遺言がある場合,遺言書の写し
2.相続放棄をする場合に家庭裁判所に提出が必要な一般的な書類は,次のとおりです。
(裁判所ごとに若干異なることもありますので、詳細は管轄の家庭裁判所にお問合せください)
(1)共通書類
①被相続人の住民票除票または戸籍附票
②相続放棄者の戸籍謄本
(2)相続放棄をするのが配偶者又は子(第一順位の相続人)の場合
上記(1)に加えて,被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍,改製原戸籍)
(3)相続放棄をするのが直系尊属(第二順位相続人)の場合
上記(1)に加えて,被相続人の出生時から死亡時までの連続した戸籍謄本(除籍,改製原戸籍)
(4)相続放棄をするのが兄弟姉妹(第三順位相続人)の場合
上記(1)に加えて,被相続人の出生時から死亡時までの連続した戸籍謄本(除籍,改製原戸籍)と被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本(除籍,改製原戸籍)
3.書類の収集についても弁護士が行います。
遺産分割や相続放棄について,弁護士にご依頼いただければ,上記の戸籍謄本等の必要書類についても弁護士が収集いたしますので,ご自身で行われる場合に比べて収集等の手間が省けます。
(制度理由)
相続により被相続人名義の不動産の登記名義の変更(法務局),預金名義の書き換え(金融機関),株式の名義変更(証券会社)などの手続をする場合,原則として被相続人の戸籍謄本・除籍謄本,相続人の戸籍謄本などの相続の発生や相続人であることを証明する書類一式を各窓口ごとに提出する必要があります。
しかし,戸籍謄本等の通数が多い場合や提出先が多いと,相続手続に係る相続人・手続の担当部署双方の負担が重く,この負担を軽減すること等を目的として,法定相続情報証明制度が始まりました。
(制度の概要)
法定相続情報証明制度とは,相続人が法務局に必要な書類(被相続人の戸籍謄本等)と相続関係を一覧にした図を提出・申請することで,登記官が法定相続人が誰であるのかを認証する制度です。登記官が認証した一覧図(法定相続情報一覧図)の写しを利用することで名義移転等の際に必要となる戸籍謄本等一式を提出する必要がなくなります。
詳しくは法務省のホームページもご参照ください。
(備考)
法定相続情報証明制度を利用することは,相続人の義務ではありませんので,相続人は,この制度を利用せずに,原則どおり戸籍謄本等一式を使って名義移転等の手続をすることもできます。
第1 相続に関して平成30年に改正がありました。主な改正内容は次のとおりです。
1.配偶者の居住権を保護するための方策
①配偶者短期居住権の創設
配偶者が相続開始の時に遺産に属する建物に居住していた場合には,遺産分割が終了するまでの間,無償でその居住建物を使用できるようにするものです。
②配偶者居住権の創設
配偶者の居住建物を対象として,終身又は一定期間,配偶者に賃料を払わせることなくその使用を認める法定の権利を創設し,遺産分割等における選択肢の一つとして,配偶者居住権を取得させることができるようにするものです。
2.遺産分割等に関する見直し
①持戻し免除の意思表示の推定
婚姻期間が20年以上の夫婦間で,居住用不動産の遺贈又は贈与がされたときは,原則として計算上遺産の先渡し(特別受益)をうけたものとして取り扱わなくてよいこととするものです。
②遺産分割前の払戻し制度の創設
相続された預貯金債権について,生活費や葬儀費用の支払などの資金需要に対応できるように,一定の割合については遺産分割前でも裁判所の判断を経ずに金融機関から払戻しが受けられる制度になります。また,限度額を超える場合には裁判所の判断を経る仮払いの方法もあります。
③相続開始後遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲に関する規定
処分された財産について一定の要件のもとに遺産に組み戻すこととして,処分された財産を遺産分割の対象に含めることを可能にするものになります。
3.遺言制度に関する見直し
①自筆証書遺言の方式の緩和
②遺言執行者の権限の明確化
③法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設
4.遺留分制度に関する見直し
遺留分権の行使によって遺留侵害額に相当する金銭債権が生ずるものとしつつ,受遺者等の請求により,金銭債務の全部又は一部の支払につき裁判所が期限を許与することができるようになりました。
5.相続の効力等に関する見直し
相続させる旨の遺言等により法定相続分を超える部分の財産を承継する場合,当該超える部分についての権利の承継は登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないこととなります。
6.相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
相続人以外の親族が被相続人の療養観護等を行った場合,一定の要件のもとで,相続人に対して金銭請求をすることができる制度(特別の寄与)が創設されました。
第2 改正法の原則的な施行日は2019年7月1日です。
ただし,
上記第1・3①は, 2019年1月13日
上記第1・1は, 2020年4月1日
上記第1・3③は, 2020年7月10日
になります。
自筆証書遺言や公正証書遺言を作成する一般的なメリット・デメリットはそれぞれ次のとおりです。
(1)自筆証書遺言の場合
【メリット】
①誰にも知られずに遺言書を作成できる(内容のみならず,存在も隠しておくことができる)
②遺言書作成の費用があまりかからない
【デメリット】
①方式不備(加除・訂正含む)で無効になる危険が大きい
②遺言書が発見されない危険や偽装・変造される危険も大きい
③遺言書の紛失や,他人による隠匿・破棄の可能性も大きい
④家庭裁判所による検認の手続が必要である
【備考】
上記デメリット②~④については,自筆証書遺言の保管制度を利用することで問題点を解消できるといわれています。
(2)公正証書遺言の場合
【メリット】
①公証人が関与することから方式不備による事後的紛争を回避できる
②遺言書は公証役場に保管されるので,偽造・変造の危険が少ない
③家庭裁判所での検認の手続が不要
④病気その他の事情により遺言者が公証役場に来られない場合でも、
公証人が病院や自宅、老人ホーム等の施設に出張して作成することができる
【デメリット】
①遺言書作成の費用がかかる
②二人以上の証人が必要
③遺言の存在と内容が外部に明らかとなるおそれがある
旧法の下では,自筆証書遺言はその全文,日付及び氏名を自書(手書き)するとともに押印をする必要がありましたが,2019年1月13日からは,自筆証書遺言に遺産や遺贈の対象となる財産の目録を添付する場合には,その目録に限っては自書(手書き)を要しないこととして,その方式が緩和されることになりました。
ただし,自筆証書に自書(手書き)によらない財産目録(例えばパソコンで作成した文書や通帳のコピーなど)を添付する場合には,偽造変造がないことを示すため,その目録の全ての用紙に署名及び押印は必要になります。
遺言者が遺言書保管所(法務大臣の指定する法務局)の遺言書保管官に対して,自筆証書遺言の保管の申請をして,遺言書の保管及び管理をしてもらう制度です。2020年7月10日から始まります。
遺言者が死亡した後,相続人や受遺者は,全国にある遺言書保管所において,遺言書が保管されているかどうかを調べたり(「遺言書保管事実証明書」の交付請求),遺言書の閲覧や写しの交付を請求すること(「遺言書情報証明書」の交付請求)ができます。
遺言書保管制度を利用することで,遺言書が紛失・滅失するおそれや相続人により遺言書が廃棄,隠匿,改ざんされるおそれもなくなります。また,遺言書保管制度を利用した自筆証書遺言については,家庭裁判所での検認も不要となります。
遺産分割に関して,弁護士に依頼した場合,以下のようなメリットがあると考えられます。
1.遺産分割に関するストレスからの解放
相続人の調査,資料の収集・調査,書類の作成や相手方との交渉をご依頼者様に代わって弁護士が行いますので,このような作業や交渉をご自身で行う手間やストレスから解放されます。
2.解決を法律的にサポート
弁護士がご依頼者様の立場に立って,ベストな解決になるよう遺産分割に臨みます。また法律の専門家である弁護士のアドバイスを常に受けることが可能ですので,日々の不安や疑問を解消し,知らなかったために損をすることも避けることができます。
3.遺産分割後の手続もご紹介
遺産分割後の相続税の申告や登記名義の移転についても協力関係にある税理士や司法書士と連携することが可能ですので,遺産分割後についてもワンストップで解決が可能です。
1.相続放棄の熟慮期間の原則 2.熟慮期間の起算点の繰下げ |
所有者不明土地対策として、各種の法改正がされています。具体的には以下のとおりです。
①相続開始の時から10年を経過すると特別受益や寄与分の主張をすることができなくなります
→10年経過後は原則法定相続分によって遺産分割をすることになります
②相続発生等から3年以内の土地建物の相続登記の義務化
→登記をしなければ10万円以下の過料になる可能性があります
→3年以内の登記が難しい場合は「相続人申告登記制度」を利用すれば3年を過ぎても過料の対象になりません。
それぞれの施行日は、以下のとおりです。
特別受益や寄与分の主張が10年以内 | 2023年4月1日施行 |
3年以内の相続登記の義務化 | 2024年4月1日施行 |
代表弁護士 山川 哲弥(大阪弁護士会所属)
2006年 神戸大学法学部卒業
2008年 神戸大学法科大学院卒業
2008年 司法試験合格
2010年 弁護士登録(大阪市内の法律事務所にて勤務)
2015年 山川哲弥法律事務所開設
これまでに扱った豊富な相続事件の知識・経験を活かして、ご依頼者様の立場からベストな解決を目指していきます。
丁寧にお話をお伺いし、現状を整理してご依頼者様にとってベストな解決を提案し,今後の見通しや費用のお話もさせていただきます。
【重点取扱案件】
遺産分割,遺言(公正証書,自筆証書),遺留分,相続放棄など
ご相談にはお話いただきやすい個室をご用意しています。
またご相談の内容等のプライバシーは厳守いたします。
INFORMATION
代表弁護士 山川 哲弥(大阪弁護士会所属)
電話 06-6229-3350
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住所 大阪市中央区北浜1-3-14 リバーポイント北浜703号
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